日本語添削ワークショップ

留学生のための日本語添削支援を向上させるために、チューター有志でワークショップを行っています。ここでは、ワークショップの内容を紹介します。また、日本語での文章執筆・添削に役立つ情報も共有していきます。お問い合わせは留学生・海外留学相談室(042-580-8168)まで。

第5回 日本語添削ワークショップ

  • 2020年11月18日(水)、17:30~19:10 (Zoomによる開催)
  • 参加者:18名
  • プログラム:
  • スタッフ紹介・趣旨説明(17:30~17:45)
  • 阿部 仁 (国際教育交流センター長/准教授)


    第1部 日本語添削の実践(17:45~18:40)


    論文チューター コーディネーター 大角洋平(法学研究科博士後期課程)
    同 吉田聡宗(法学研究科博士後期課程)
    同 吉田真悟(言語社会研究科博士後期課程)

    1. 論文ドラフトのサンプルの個人添削 (17:50~18:10)
    2. 小グループでの振り返り (18:10~18:30)
    3. 振り返りの全体での共有(18:30~18:40)

    第2部 添削スキルアップのためのヒント(18:40-18:50)


    栁田 直美(国際教育交流センター 日本語教育部門長/准教授)
    大角洋平(法学研究科博士後期課程)

    1. カラーコーディングを使った効率的な添削テクニック
    2. 頻発するエラーを採録するエラーログの活用による留学生ライティング支援

    第3部 ワークショップ 質疑応答(18:50~19:10)


  • 概要:
  • 2020年度の論文チューターワークショップ(以下WS)は、論文チューターの参加を必須とした。ワークショップの目的は①実践を通じ論文チューターとして注力すべき日本語添削方法を紹介し、②日本語添削効率化のためのヒントを共有し、③論文チューターが直面する課題や質問に応える場を提供することとした。


    開会あいさつの後、第一部では、各グループに分かれて添削がどこまで進んだかを確認したうえで、添削のコツや、論文チューター活動を行う際の悩みなどが共有された。その後、各グループでいかなる議論が交わされたかについて、吉田(法研)、大角(法研)、吉田(言社)、栁田(国際教育交流センター 日本語教育部門長/准教授)から紹介された。


    添削のコツについては次のことが指摘された。まず、添削対象の位置づけを最初に確認することの重要性である。例えば、添削対象が指導教員からの指導を受ける前のものであれば、指導後に内容の大幅な書き換えが行われることが想定される。この場合、微に入り細にわたって添削して、指導後に一からやり直しになるよりも、論旨を明確にし、指導に支障が生じない限りで添削を行い、指導後に改めて添削を行うほうが、チューター・チューティー両者にとって時間の有効利用となる。


    また、母語に由来する類型的誤りの存在を自覚することの重要性である。日本語話者が英語で論文を書く際、母語の影響から時制に関わる文法上の誤りを犯しやすいところ、それと同種のことがチューティーが日本語論文を書く際にも生じる。母語由来の誤りの存在それ自体にチューティー側が自覚的になることが、より良い日本語添削へと繋がりうる(その点につき第二部・エラーログ参照)。

    そして、日本語添削室の利活用とその連携が提案された。すなわち、チューターによる添削に先立ち、日本語添削室による一般的・包括的な添削を受けておき、その後、チューターがきめ細やかな添削を行うということで、時間の有効活用ができるのではないかと提案された。今後、日本語添削室と論文チューターの連携が制度的に公式化することも期待される。そのほか、時間配分を意識した添削にむけて、論文全体の概略を最初に把握することが良いと指摘された。


    他方、添削の悩みについては次のことが指摘された。まず、内容と文法の峻別の難しさである。添削実践上、内容に関わる指摘と文法に関わる指摘の区別は容易ではない。さらに、フォントや書式調整まで添削対象とすべきかも曖昧である。こうした悩みに加え、日本語文法を説明する必要があるのかどうか、あるとすればどうやって・どの程度行えばよいのかといった、論文チューターの理念・日本語教育能力・時間制約に関わる悩みも提示された。さらに、熱心な添削がチューティーのオーサーシップを損なう場合や、添削の際の言葉遣い如何によってはチューター・チューティーの関係悪化へと繋がりうるとの懸念も示された。これら悩みに対する処方箋の一つが、留学生との綿密な打合せである。書式に関わる添削が不要との合意形成がされるならば、そこはカットすることになるだろう。約束事を決めておけば、関係悪化も予防できる。しかし、打合せが万能薬でないのは当然であり、これら悩みは今後も論文チューターの課題となり続けるだろう。


    第二部では、日本語添削効率化の方法として、コーディングおよびエラーログについて説明が行われた。まず日本語教育の専門家として栁田(国際教育交流センター 日本語教育部門長/准教授)からは、誤用の類型に応じて色分けを行うという方法が提示された(カラーコーディング)。助詞の誤りは黄色、「」などの記号の利用に関わる誤りは緑、文法的にはおかしくないが日本語話者にとって違和感のある表現は青色にする、などである。


    この方法にはいくつかの効能がある。色分けにとどめ、チューティー側がその色の意味に従い、自ら手直しすることで作業量を抑えられる。加えて、その営みはチューティー側の日本語論文執筆能力の向上にも繋がる。正しいものへと全て書き換えることは自立した書き手への成長を妨げるおそれをはらむという警鐘に耳を傾ける必要があろう。もっとも、こうした方法をどの時期に、どこまで取り入れるかは、チューティー側との打合せに依存するだろう。


    また論文チューター経験者として大角(法研)からは、誤用を採録するエラーログについて説明が行われた。誤用を採録し、誤用である理由を表記し、適切な表現を記載するのがエラーログである。これにより、各チューティーが陥りやすい誤りが可視化され、個別にチューンナップされた文法書として学習に役立ち、自立した書き手へとも近づく。さらに、繰り返し同じ指摘をしなくて済むために、作業量の削減も同時に期待される(エラーログ)。もっとも、この方法は、誤用の理由を丁寧に説明することが求められるとすると、チューター側の日本語教育能力に大きく依拠することになる点で限界があるだろう。


    第三部では、最後に全体ディスカッションが行われた。フロアからは、誤用が誤用である理由を説明するのが難しいことや、どうしても論文の内容に触れざるを得ない場合もあることなどが指摘されていった。こうした指摘からは、日本語教育を専門とする院生・教員と論文チューター側が連携していくことの可能性・重要性や、チューター理念と実践のすり合わせについてのさらなる議論の必要性が示唆される。

第4回 日本語添削ワークショップ

  • 2019年10月16日、17:30~19:00 於東1号館2階1208教室
  • 参加者:19名(主催者・発表者含む)
  • ワークショップの風景 ワークショップの風景

  • 第4回日本語添削ワークショップ案内ポスター
  • プログラム:
  • 第1部 趣旨説明(17:30~17:45)
    田口陽子 (一橋大学大学院社会学研究科 講師/留学生アドバイザー)

    第2部 論文チューター実践案の紹介(17:45~18:20)
    大角洋平(法学研究科博士後期課程)
    吉田聡宗(法学研究科博士後期課程)
    吉田真悟(言語社会研究科博士後期課程)
    「諸制約の中でのチューター実践」
    ① 対面チューター・時間制約の合理性の検討 (法研・大角)
    ② 頻発するエラーを採録するError-logの紹介 (法研・大角)
    ③ 留学生の主体性を尊重する時間配分・依頼シートの提案 (法研・吉田)
    ④ 日本語添削室チューターからのコメント (言社・吉田)

    第3部 ワークショップ(添削実践)(18:20~18:50)
    全体ディスカッション(18:50~19:00)


  • 概要:
  • 今回のワークショップ(WS)では、メーリングリストやポスター等を用いた学内広報活動を行った。その結果、チューター経験者のみならず、チューター制度に関心のある学生や教員が参加し、さまざまな立場から活発に意見が交わされた。

    第1部での制度の概要と課題が示されたのち、第2部では、まず大角(法研)から、留学生のニーズ(校正、査読、教育)とチューター制度の制約(時間、能力、研究倫理、教育理念)のあいだの葛藤という枠組みが示された。そのうえで、諸制約のもとでニーズを満たすための具体的な実践案の一つとして、「エラーログ」の活用が提案された(資料集参照)。エラーログを用いることで、個々のチューティー(留学生)の誤用を類型化・記録化し、チューティーの学習に役立てるとともに、チューターの作業量を削減することが期待される。


    続いて吉田(法研)から、チューター活動において、チューターが握りがちな主導権をチューティーと共有するための手段として、「依頼シート」(資料集参照)が提案された。依頼シートには、論文の進捗状況、相談内容、利用時間の配分等に関する希望を記入する項目がある。このシートを活用することで、何をどこまで行うのかをチューティー主体で決定し、ひいてはチューティーのオーサーシップの侵害とチューターの超過労働を予防することができる。


    以上の提案を受けて、吉田(言社研)がコメントした。吉田からは、制度上の想定とは異なり、留学生も大学教員もチューターに「全文の校正」を期待している現状についての問題提起がなされた。そのうえで、日本語添削室での経験から、対面でのコミュニケーションを通した添削の利点が紹介された。


    第3部では、本WS恒例の添削体験が行われた。今回は、留学生が書いた日本語資料を実際に添削しながら、同時にエラーログをつけるという実験を行った。その後、参加者が相互に添削を共有し、意見交換を行った。


    最後に、チューターの理念、制度、職務内容をめぐって全体ディスカッションが行われた。論文チューターに求められていることは日本語の添削に限られ、論文の内容(論旨、論理構成)は指導教員に任せるべきものなのではないか? チューター活動の内容は日本語教育であるので、日本語教育の専門家の支援が必要なのではないか? チューターとチューティーのあいだに生じうる複合的な権力関係に配慮した制度設計が求められるのではないか? 質疑応答を通して、今後のチューター制度改善にとって重要な教育・研究上の論点が提示された。


資料集

WSで使用した資料を、チューター活動に役立ててもらえるように共有します。

内容やフォーマットは各自で使いやすいように修正して、適宜ご活用ください。

  • チューター手順(マッチング前後) PDF
  • チューター実践案 PDF
  • 読み手に優しくない論文を書くコツ! PDF
  • エラーログ WORDPDF
  • 論文チューター依頼シート WORDPDF
  • 初年度チューター依頼シート WORDPDF

第3回 日本語添削ワークショップ

  • 2019年7月23日、17:30~19:00 於国際研究館 2F 4201教室
  • 参加者:現役チューターおよびチューター経験者等 計7名、日本語教員2名、チューター担当(留学生相談室)教員1名
  • 概要:

今回のワークショップ(WS)は、今後継続的にWSを開催していくためのパイロット・プロジェクトとして、規模を拡大して実施した。参加者として、運営に関わっているボランティア・スタッフの伝手を用いて添削室チューター、初年度チューター、論文チューター経験者等に声をかけたほか、国際教育交流センター・日本語教育部門の教員を招待し、意見交換を行った。


今回も、まずは留学生が書いた学会発表用の草稿を用い、参加者全員が20分間添削を行った。その後、ペアになってお互いの添削を確認し、気づいた点について全員で共有した。


その結果、チューターと日本語教員のあいだで、添削方法に違いがあることがわかった。チューターの添削においてはエラー箇所をすべて書き直すという方針が一般的であった。一方、日本語教員の添削においては、エラーを指摘しながらも、すべてを書き直さないという方針がとられていた。さらに、下線や記号を用いてエラーの類型を示すことで、添削時間を節減するという技術が紹介された(例:助詞の誤用ならP、語彙ならVなど)。このように、学習者の気づきを促し知識を定着させるための教育実践は、「自立した書き手を育てる」ためのチューター制度にとっても重要である。


終了後のアンケートでも、添削の教育的、技術的な側面についての情報が有益であったというコメントが多く、スキルアップに焦点を当てたWSが求められていることがわかった。今後は、いかに参加者を増やしながら、持続可能な形で、チューターに役立つWSを運営していくのかが課題となる。


WSでは、日本語教員から、添削に役立つ文献やオンライン・ツールも紹介された。以下の文献については、チューターや学習者が利用できるように、日本語添削室で所蔵することにした。


チューターと学習者に役立つ文献&オンライン・ツール

作文指導

  • 『日本語教師のための実践・作文指導』石黒圭 編著(2014)くろしお出版

レポート・論文の指南書

  • 『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』石黒圭(2012)日本実業出版社
  • 『留学生と日本人学生のためのレポート・論文表現ハンドブック』二通信子・大島弥生・佐藤勢紀子・因京子・山本富美子(2009)東京大学出版会

日本語コーパス

  • NINJAL-LWP http://nlt.tsukuba.lagoinst.info/
  • 『日本語コーパス活用入門:NINJAL-LWP実践ガイド』赤瀬川史朗・プラシャント パルデシ・今井新悟(2016)大修館書店

日中同形異義語

  • 『日中同形異義語辞典』王永全・小玉新次郎・許昌福 編著(2007)東方書店
  • 『おぼえておきたい日中同形異義語300』上野恵司・魯暁王昆 共著(1995)光生館
  • 「同形二字漢字語の品詞性に関する日韓中データベース」朴善女周・熊可欣・玉岡賀津雄(2014)『ことばの科学』27, 53-111. 名古屋大学
  • ※このデータはオンライン検索ツール(http://kanjigodb.herokuapp.com/)として公開されています。

(レベル別)留学生向け作文テキスト

  • 中級
  • 『小論文への12のステップ:中級日本語学習者対象』友松悦子(2008)スリーエーネットワーク

  • 中上級
  • 『留学生のためのここが大切 文章表現のルール』 石黒圭・筒井千絵(2009)スリーエーネットワーク

  • 中上級~上級
  • 『ここがポイント!レポート・論文を書くための日本語文法』小森万里・三井久美子(2016)くろしお出版

第2回 日本語添削ワークショップ

  • 2019年7月9日、10:45~12:00 於留学生・海外留学相談室
  • 参加者:論文チューター経験者および現役添削室チューター(一般チューター経験者)計3名、チューター担当教員1名
  • 概要:

留学生が実際に書いた文章(授業のための文献の要約)を用いて、参加者全員が添削を行った。今回は、全体の文章構成や内容には踏み込まず、なるべく日本語の文章添削のみに集中することにした。まずは20分間でそれぞれが添削し、その後、全体で気になった点などを議論した。さらに、二人でペアになってそれぞれの添削結果を確認した。


日本語のみのミニマルな添削を心がけていても、添削者によって添削箇所や内容にかなりの差が出ることがわかった(感覚的に、同じ添削をしている個所は半分くらいで、それ以外は指摘箇所・内容ともに異なる)。用語の定義や統一について指摘するのかどうか、論理の流れまで踏み込むのか、意味が取れなかった文章に対してはどのように対応するか(翻訳や要約の場合は原典まで確認するのか)、等の論点が上がった。また、学習効果を高めるために、エラーをタイプごとに整理する「エラー・ログ」の導入も検討された。


ワークショップの風景

ワークショップの風景

第1回 日本語添削ワークショップ

  • 2019年6月4日、10:45~12:45 於留学生・海外留学相談室
  • 参加者:論文チューター経験者および現役添削室チューター(一般チューター経験者)計3名、チューター担当教員1名
  • 概要:

参加者全員が、これまでの経験にもとづいた添削の方針や方法を共有するために、実際に博士課程の留学生が書いた原稿(学会発表用草稿)を添削し、課題について話し合った。まずは20分と時間を定め、参加者全員がそれぞれのやり方で添削を行った。つぎに、各自の添削をもとに議論した。


結果として、次の二つのやり方が浮き彫りになった:(1)全体を見渡して、論文の主張や構造を見極め、それに応じたアドバイスをする、(2)前から順番に読んで日本語で気になった箇所を修正していく。


論文チューター制度の性質上、論文の内容(1)にまで踏み込まず、日本語の添削に集中する必要がある(2)。しかし、適切な添削を行うためには、書き手の主張を理解したうえで論文に相応しい文章に修正する必要がある。そのため実際には両者を区別することは難しく、一人でストレスを抱えこんでしまうチューターも多い。そこで、複数のチューターで作業をし、悩みを共有したりフィードバックを与え合うことで、各チューターが自分のやり方を見つけられるよう、ワークショップを継続していくこととした。

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