参考資料(論文チューター・日本語添削)
以下、論文チューターおよび日本語添削チューターに役立つ資料をまとめます。日々の添削活動の中で疑問や悩みに直面した際に参考にしてください。
1. チューターによくある質問・お悩みFAQ
論文チューターや日本語添削チューターの皆さんからしばしば寄せられる悩みや疑問とそれに対して考えられる対応策を紹介します。実際に添削を行う時には、書き手や文脈に応じた柔軟な対応が求められますが、それぞれの場面における対応を考える上での参考にしてください。
なお、チューターのためのオンデマンド動画も併せてご活用ください。動画のリンクはチューター登録時にお伝えしており、視聴は必須となっております。
このFAQにない質問やお悩みは、是非チューター座談会や振り返り会などにお寄せください。
Q: 文法的なエラーを一つ一つ修正したり説明したりしていると時間が足りなくなってしまいます。
A: チューターのためのオンデマンド動画「添削Tips」を参照し、「グローバル・エラー」と「ローカル・エラー」を区別して添削活動にあたるようにしてください。「ローカル・エラー」にあたる文法の誤用は、指摘する程度にとどめ、書き手が自分で参考書などを参照して理解・修正するようにしてもらいましょう。
チューターの役割は、留学生の原稿を完璧なものに仕上げることではありません。書き手には添削ツールPruvなどを活用して自分で直せるローカル・エラーをできるだけ直し、チューターとの時間をグローバル・エラーの修正や表現の推敲などに使うことで、自立した書き手になれるように指導してください。Pruvの活用方法は、チューターのためのオンデマンド動画「WS①:日本語添削オンライン・ツールPruvの紹介とデモンストレーション」と「WS②:日本語添削オンライン・ツールPruvに検出されにくいもの、よくある誤りの例」をご参照ください。
Q: 一番適切な表現を提示できているのか分からず、不安です。
A: チューターの役割は、一番適切な表現を提示することではありません。最終的にどのような表現をするかを決めるのは書き手です。書き手が何を言おうとしているのかを理解するために、「~という意味ですか?」などと確認を入れながら適切な表現を一緒に考えていきましょう。考えられる表現をいくつか示し、その表現の違い(例えば、表現Aと表現Bが強調する点の違いやニュアンスの違い)を説明すると、書き手が意図する表現を自分で選択するのに役立つでしょう。
Q: 長い文章やパラグラフなど、何が言いたいのかよく分からないライティングをどう添削したらよいのか分かりません。
A: 言いたいことを一気に詰め込んで文章にまとめようとしてわからない文章になっていることがよくあります。こうした部分は、いきなり文章を添削しようとせず、まず、何が書きたかったのか会話を通して説明してもらってください。聞き手に対してわかるように説明しようとすることで、多くの場合、書き手自身で論点を整理することができます。
また、分かりにくい箇所を書き手自身に音読してもらうか、もしくはMicrosoft Wordの「校閲」のタブの中にある「音声読み上げ」の機能を使って音読されたものを聞いてもらってください。視覚だけでなく聴覚も使うことで、書き手自身が自分の誤りや分かりにくい文章に気付くこともあります。こうして自分の誤りや癖に気付かせ、その後のライティングに役立ててもらうことも自立した書き手を育成するために有効な手法です。
Q: 知らない専門用語が多く、内容の理解が困難な原稿は、明らかな誤りの訂正以外の添削がしづらいです。
A: 添削を開始する前に、まず、書き手に原稿の趣旨を説明してもらうとよいでしょう。チューターが原稿の大まかな内容を理解することで、添削の効率と質を向上しやすくなります。また、書き手が自分の研究内容を専門外の人に分かりやすく説明できるのは、研究者として大切なスキルですので、書き手にとっても役に立つプロセスになるといえます。
Q: 意味が分からなかったり、ぎこちないと感じたりするような言葉や言い回しに関して、それがその分野独特の表現や専門用語なのか、それとも言語の問題なのかを判断しづらいです。
A: その専門分野ではそのような言い回しをするのか書き手に聞いてみましょう。書き手自身がよく分からないようであれば、他に考えられる言い回しをいくつか提示し、書き手の指導教員に相談してもらいましょう。
2. 論文チューターのための参考資料
- チューターと留学生、ペアになる為の確認事項 (242KB)
- チューター活動例 (543KB)
- エラーログリスト (287KB)(word版はこちら(18KB))
- 論文チューター依頼シート (153KB)(word版はこちら(22KB))
3. 日本語添削支援のオンライン・ツール
- 日本語作文支援システム「なつめ」(使いたい語彙の使い方の検索ができます)
- 現代日本語書き言葉均衡コーパス(現代日本語の用例を集めたデータベースです)
- 「同形二字漢字語の品詞性に関する日韓中データベース」朴善女周・熊可欣・玉岡賀津雄(2014)
- PRUV(プルーブ):オンライン文章校正支援サービス
4. 参考書
作文指導
- 『日本語教師のための実践・作文指導』石黒圭 編著(2014)くろしお出版
- 『日本語文章チェック辞典』石黒圭 東京堂出版(2021)(アカデミック用ではないが、直し方の勘所がわかる)
レポート・論文執筆の指南書
- 『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』石黒圭(2012)日本実業出版社
- 『留学生と日本人学生のためのレポート・論文表現ハンドブック』二通信子・大島弥生・佐藤勢紀子・因京子・山本富美子(2009)東京大学出版会
- 『日本語コーパス活用入門:NINJAL-LWP実践ガイド』赤瀬川史朗・プラシャント パルデシ・今井新悟(2016)大修館書店
- 『思考を鍛える レポート・論文作成法』井下千以子 慶應義塾大学出版会(2013)(パターンが豊富・ルーブリックあり)
日中同形異義語
- 『日中同形異義語辞典』王永全・小玉新次郎・許昌福 編著(2007)東方書店
- 『おぼえておきたい日中同形異義語300』上野恵司・魯暁王昆 共著(1995)光生館
留学生向け作文テキスト(レベル別)
- 中級:『小論文への12のステップ:中級日本語学習者対象』友松悦子(2008)スリーエーネットワーク
- 中上級:『留学生のためのここが大切 文章表現のルール』 石黒圭・筒井千絵(2009)スリーエーネットワーク
- 中上級~上級:『ここがポイント!レポート・論文を書くための日本語文法』小森万里・三井久美子(2016)くろしお出版
- その他:コンサルタントの秘密(共立出版)